
産業規模の電力運用問題で、量子・古典ハイブリッド最適化の可能性を検証。
英国国立量子コンピューティングセンター(NQCC)のSparQプログラムにおいて、JIJ EuropeはORCA Computing、NQCC、bpとともに、電力運用に関わる大規模最適化問題「ユニットコミットメント問題」を対象に、量子・古典ハイブリッド最適化の性能と今後の可能性を検証しました。
ユニットコミットメント問題とは
電力需要を満たしながら、どの発電設備をいつ起動・停止し、どの出力で運転するかを決める問題です。需要予測、発電コスト、起動停止コスト、設備性能、予備力など、多数の条件を同時に扱う必要があります。再生可能エネルギーや分散型電源の拡大によって電力システムが複雑になるなか、より良い計画を現実的な時間で求める計算技術が重要になっています。
量子と古典を組み合わせるアプローチ
本プロジェクトでは、JIJが開発した分解手法を用いて、大規模な混合整数線形計画問題を複数の小さな問題へ分割しました。発電設備の起動・停止に関わる組合せ最適化部分をQUBO形式へ変換し、ORCA Computingの光量子プロセッサで実行。発電量などの連続変数は古典計算機で処理し、最後に結果を統合して問題全体の解を構成します。
JIJ Europeがプロジェクトを主導し、分解アルゴリズムと最適化ワークフローを開発しました。ORCA Computingの光量子システムと統合し、NQCCのテストベッド環境で評価を実施。bpはエネルギー業界の知見を提供するオブザーバーとして参加しています。
産業規模のベンチマークで検証
検証では、bpのデジタルR&Dチームが産業利用上の妥当性を確認したベンチマークデータを使用しました。最大規模の問題は25,755変数・48,939制約で、実量子プロセッサを組み込んだ量子・古典ハイブリッド方式により解を生成し、元の問題に対する実行可能性を確認しています。
現行のPT-2では、短い計算時間ではGurobiが優位でした。一方、ハイブリッド方式は計算時間を延ばすことで解の改善が続き、今回の条件では最終的に競争力のある解品質を示しました。次世代PT-3に関する結果は、現在の実測値をもとにした性能予測です。
これらの結果は、商用量子優位性や実運用への導入が確立されたことを示すものではありません。産業利用を想定した規模のベンチマークを通じて、現在のハイブリッド方式で到達できる水準と、計算時間やシステム構成を含む今後の課題を整理したものです。
今後の実用化に向けて
本プロジェクトでは、量子・古典ハイブリッド最適化をより大きな問題へ拡張するために必要なハードウェアとソフトウェアの要件も検討しました。今後も実機での検証と古典手法との比較を重ねながら、エネルギー分野における実用可能性を評価していきます。
