
JIJとTinuviel Therapeutics、腸内マイクロバイオームの予測モデリング高度化に向けた共同研究を発表
株式会社JIJ(ジェイアイジェイ、以下「JIJ」)は2026年9月18日、腸内マイクロバイオーム* の予測モデリングを高度化するため、Tinuviel Therapeutics Co., Ltd.(以下「Tinuviel Therapeutics」)との共同研究を発表しました。
2026年4月に開始された本共同研究は、Wellcome Leapの「Foundations of a Resilient Microbiome(FORM)」プログラムのもと、Tinuviel Therapeuticsが主導するプロジェクトを支援するものです。
JIJは、これまで産業分野で培ってきた数理最適化、機械学習、データ分析、高度な計算技術に関する知見を活かし、腸内マイクロバイオームの変化予測やレジリエンス評価に必要な計算手法の開発に貢献します。
マイクロバイオーム研究を「記述」から「予測」へ
腸内マイクロバイオームは、多種多様な微生物が相互に作用し、時間の経過とともに変化する複雑で動的な生態系です。妊娠中から乳幼児期にかけてのマイクロバイオームの形成や、外部からの撹乱に対して安定した状態を維持・回復する能力は、長期的な健康や神経発達との潜在的な関連性から、重要な研究分野となっています。
シーケンシングや生物学的解析技術の進歩により、マイクロバイオームの組成や特徴を詳細に捉えることが可能になってきました。一方で、マイクロバイオームが撹乱に対してどのように応答し、その後どのように回復するかを予測することは、依然として大きな科学的課題です。
Tinuviel Therapeuticsは、現実世界のデータをもとに、対象となる現象やシステムをコンピュータ上に再現する「デジタルツイン・モデリング」に取り組んでいます。
同社のシステム生物学やマイクロバイオーム動態に関する知見と、JIJの数理最適化・高度な計算技術を組み合わせ、マイクロバイオームのデジタルツインモデルを構築し、その状態変化の予測と定量評価に取り組みます。
両社の役割と研究目的
Tinuviel Therapeuticsは、マイクロバイオームの経時的変化と、それを駆動する生物学的相互作用を表す計算モデルを開発します。
JIJは、多数の変数、制約条件、および潜在的なシナリオを含む複雑なモデルを解析するための手法を提供します。
本共同研究では、以下を可能にする計算手法の開発を目指します。
マイクロバイオームの経時的な変化と、さまざまな撹乱要因に対する応答のモデリング
マイクロバイオームの回復動態、レジリエンス(撹乱に耐え、回復する能力)、脆弱性の定量的な評価
乳幼児期におけるマイクロバイオームのレジリエンスの維持・回復を支える可能性のある、介入候補の設計・評価
Tinuviel Therapeutics Co., Ltd. CEO Timur Tuganbaev氏のコメント
「マイクロバイオームは生涯にわたる健康に重要な役割を果たしています。神経発達において、特に乳幼児期は極めて重要な時期ですが、乳児のマイクロバイオームは、生物学的に非常に複雑で、時間とともに変化する動的なシステムです。そのため、その状態を理解し、評価するには高度な計算技術が必要です。
この研究を進めるうえでは、高度な専門性と実績を持つパートナーとの連携が不可欠でした。数理最適化と高度な計算技術において世界クラスの専門知識を持つJIJと協業することで、乳幼児期のマイクロバイオームが撹乱に耐え、回復する力である『レジリエンス』をより深く理解し、その維持・回復を支えるための計算基盤の構築を目指します。
将来的には、こうした研究成果を、スクリーニングや診断技術、さらには個別化された介入の可能性につなげていきたいと考えています。」
株式会社JIJ 代表取締役 CEO 山城 悠のコメント
「マイクロバイオームは、多くの要素が相互に作用し、時間とともに変化する非常に複雑なシステムです。数理最適化は、複数の制約条件やトレードオフを考慮しながら、さまざまな可能性を探索・評価するための有望なアプローチの一つだと考えています。
本共同研究は、JIJが培ってきた最適化技術と計算能力の応用領域を、ライフサイエンスへ広げる取り組みです。
Tinuviel Therapeuticsとの共同研究を通じて、マイクロバイオームという複雑なシステムへの理解を深め、将来的に人々の健康に貢献しうる新たな計算基盤の構築につなげていきたいと考えています。」
FORMプログラムについて
Wellcome Leapの「Foundations of a Resilient Microbiome(FORM)」プログラムは、母体や発達期にある乳児の腸内マイクロバイオームが、健やかな神経発達にどのような役割を果たすのかを、より適切に評価するための研究に取り組んでいます。
FORMでは、乳幼児期に受けるさまざまな負荷が発達段階の腸内マイクロバイオームに蓄積することで、自閉スペクトラム症を含む神経発達上の課題の一因となり得るかを検証します。
また、重要な発達段階において、腸内マイクロバイオームが撹乱に耐え、回復する力である「レジリエンス」を測定し、その維持・回復を支えることで、将来的な介入の可能性を広げられるかについても研究します。
こうした関連性については現在も科学的な議論が続いており、より厳密かつ大規模な研究が必要であるという認識が広く共有されています。
FORMは、プログラムディレクターの主導のもと、複数分野の研究チームがマイルストーンに沿って横断的に連携しながら進められています。また、自閉症当事者やその家族、保護者、介護者を含むコミュニティとの連携も重視しています。
FORMプログラム公式サイト:https://wellcomeleap.org/programs/form
Tinuviel Therapeuticsについて
Tinuviel Therapeuticsは、個別化医療の計算基盤を構築するプレシジョン・ヘルス企業です。最先端のマイクロバイオーム科学と高度な計算技術を組み合わせ、個々の治療反応をシミュレートするヒトマイクロバイオームのデジタルツイン・プラットフォームを開発し、試行錯誤による医療から、個々に合わせて設計する精密医療への転換を目指しています。
同社は、初期の研究領域として、乳幼児期のマイクロバイオームに注力しています。
Tinuviel Therapeuticsは、Wellcome LeapのFORMプログラムに採択された研究チームの一つです。
代表者:CEO Timur Tuganbaev
ウェブサイト:https://www.tinuvieltherapeutics.com/
株式会社JIJについて
株式会社JIJは、複雑な計画、割り当て、スケジューリング、意思決定などの課題を解決する最適化技術およびソフトウェアを開発するディープテック企業です。数理最適化を中核に、AIを活用したモデリングや高度な計算技術を組み合わせて、製造、物流・輸送、情報通信、エネルギー、素材、公共分野など、幅広い産業の課題解決を支援しています。
日本、イギリス、ドイツ、アメリカを拠点に、世界各地の企業、研究機関、技術パートナーと連携しています。
* 腸内マイクロバイオーム(微生物叢)
人の腸内に生息する、細菌、真菌、ウイルスなど多種多様な微生物と、それらが構成する生態系のこと
<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社JIJ コミュニケーションチーム
Email: pr@j-ij.com