量子コンピュータの産業化のためのミドルウェア開発を推進 量子誤り訂正・緩和技術の開発を加速しデータ基盤構築へ株式会社Jij(本社:東京都港区、代表取締役 CEO:山城 悠)は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の課題③:量子コンピュータの産業化のためのミドルウェア開発において採択されたことをお知らせします。本研究開発のテーマは「量子誤り訂正および緩和手法のデータ駆動型開発を加速する共通データスキーマ規格とエミュレーション基盤の構築」 となります。本プロジェクトは国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」)とともに実施するものです。背景量子コンピュータの実用化に向けて、世界中で研究開発が急速に進んでいます。しかし、現在の量子コンピュータはノイズやエラーの影響を受けやすく、計算の信頼性を確保するためには「量子誤り訂正・緩和」技術の確立が不可欠です。この技術は、量子コンピュータが真の実用性を獲得するための最重要課題の一つとされています。近年、量子誤り訂正・緩和技術の研究において、従来の理論的アプローチに加えて、実際のハードウェアから得られる大量の実験データを活用する「データ駆動型アルゴリズム」の有用性が注目されています。Google DeepMindのAlphaQubitが従来手法を上回る性能を達成するなど、機械学習とデータ駆動型アプローチによる革新的な成果が相次いで報告されています。しかし、現在の研究環境では、超伝導、中性原子、光量子など、各量子デバイスから得られる実験データの形式が統一されておらず、研究者間でのデータ共有や異なるハードウェア間での性能比較が困難な状況です。さらに、量子ハードウェアへの実機アクセスは高コストかつ時間制約が大きいため、データ駆動型アルゴリズムの開発に必要な十分な実験とデータ蓄積が阻害されています。これらの課題を解決し、データ駆動型の量子誤り訂正・緩和技術の研究開発を加速させることが、量子コンピュータの社会実装を実現する上で急務となっています。プロジェクト概要本プロジェクトでは、異なる量子デバイス間で統一的にデータを扱える「共通データスキーマ規格「Q-DATA」を策定し、オープンソースとして公開することで、様々な量子プラットフォームで得られる実験データの可搬性と比較可能性を実現します。また、Q-DATAに蓄積された実機の実験データから機械学習技術によりノイズ特性を学習し、効率的にノイズモデルを実行できるテンソルネットワーク手法をベースとした大規模エミュレータを開発します。このエミュレータでは、実機に固有の複雑なノイズを忠実に再現できるため、従来困難であった現実的な環境下での量子アルゴリズムの挙動の実機を用いることなく高精度に予測・検証できるようになります。これにより、量子アルゴリズムの開発・検証サイクルが効率化され、結果としてアルゴリズムの性能向上や実用化への展開が大幅に加速されることが期待されます。研究開発体制本プロジェクトは、以下の体制で推進します。助成機関: NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)代表事業者/主任研究者: 株式会社Jij (主任研究者:代表取締役 CEO 山城 悠)共同研究先: 国立研究開発法人産業技術総合研究所 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター開発テーマ: (g5)量子コンピュータの産業化に向けた開発の加速採択事業テーマ: 量子誤り訂正および緩和手法のデータ駆動型開発を加速する共通データスキーマ規格とエミュレーション基盤の構築事業期間: 2025年8月~2028年3月今後の展望本プロジェクトで開発する技術は、当社が提供する量子・最適化技術を活用したソフトウエア開発プラットフォーム「JijZept」に統合し、新たな製品・サービスとして展開していく計画です。今後、段階的に開発を進め、2027年度末のプロジェクト完了までには、多様な量子コンピュータに対応した共通データスキーマ規格「Q-DATA」の公開と、高精度なノイズ学習型エミュレータの完成を目指します。多様な量子コンピュータの発展に追従し、国内の量子エコシステム全体の活性化に貢献します。また、本プロジェクトの成果をオープンにすることで、日本発の技術が国際標準となることも視野に、グローバルな研究開発コミュニティの発展を後押ししてまいります。国立研究開発法人産業技術総合研究所 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター センター長 益 一哉量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)は2023年に設立され、量子技術とAI技術の融合を通じて量子コンピューティングに代表される量子技術の実用化と、量子技術によるビジネス創出、グローバルなエコシステムの創出をめざし活動を行っています。今回のプロジェクトでは、G-QuATが保有する量子・AIハイブリッド計算基盤「ABCI-Q」を最大限に活用し、Jij様との連携のもと、量子コンピューティング技術の社会実装に向けて共通データスキーマとエミュレーション基盤の研究開発を推進します。本プロジェクトの成果は、可能な限りオープンに公開するとともに、国際標準化も視野に入れ、グローバルな量子エコシステムの発展に貢献してまいります。株式会社Jij 代表取締役 CEO 山城 悠私たちJijは「社会を計算可能にし、人類の進歩に貢献する」をミッションに量子コンピューティング技術の研究開発を進めてきました。今回のプロジェクトを通して、量子コンピュータ実用化の最大の課題である量子誤り訂正・緩和技術の発展を加速し、この革新的な計算技術を社会全体で活用できる基盤を構築します。産総研様との連携により開発する共通データスキーマとエミュレーション基盤は、世界中の研究者が量子技術を活用できる環境を整備し、ハードウェアの多様性という複雑さを乗り越える道筋を示します。計算による社会の効率化と最適化を通して、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。株式会社Jij 会社概要Jijは、「社会を計算可能にし、人類の進歩に貢献する」をミッションに掲げ、大規模な計算を伴う最適化計算事業を実施するスタートアップです。量子・最適化技術を活用した次世代のソフトウエア開発プラットフォーム「JijZept(ジェイアイジェイ・ゼプト)」は、英国・米国・ドイツ・シンガポール・日本などで利用されており、エネルギーの需給計画や製造業の生産計画といった計画業務に対して、独自のアルゴリズムと最新のソフトウエア技術を組み合わせることで、効率的かつ高精度な開発ソリューションの実現を可能にします。会社名:株式会社Jij (ジェイアイジェイ)代表:代表取締役 CEO 山城 悠(やましろ ゆう)所在地:〒108-0023 東京都港区芝浦三丁目3番6号東京科学大学田町キャンパス・イノベーションセンター INDEST403号室コーポレートサイト:https://www.j-ij.com/ja/創立:2018年11月事業内容:量子・古典ハイブリッド技術を活用した企業向け最適化ソリューションの販売や提供問い合わせ先:株式会社Jij コミュニケーションチーム / pr@j-ij.com